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パラじゃなくて、デフ

  • paraspoofficial
  • 14 時間前
  • 読了時間: 3分

 

 

「今日、テレビで、パラリンピックの空手選手のことをやっていたわよ」

8月下旬の週末、暑気払いに出かける道中で専業主婦の友人がこう言った。

 

2024年にフランス・パリで開催されたパラリンピックの実施競技に、空手は含まれていない。つまり、空手の選手は、直近のパラリンピックには出ていない。友人は、空手を他の競技と勘違いしたのかもしれない。

 

私はパラの実施競技のなかで空手に似ている競技を考えながら、「空手ではなく、テコンドーだったんじゃない?」と尋ねた。すると、「違うわよ、絶対に空手よ!」と自信たっぷりの答えが返ってきた。

私は「何か変だな」と首をひねったものの、話題はすぐに別に移って、そのままになってしまった。

 

今年11月15日から11月26日、「東京2025デフリンピック」が日本で開催される。

デフとは聴覚に障害がある人(Deaf)で、4年に1回、デフのアスリートのために開催される国際大会がデフリンピックだ。

 

大会が近づいてきたこともあり、改めて実施競技の一覧を眺めていて気が付いた。

デフリンピックで実施される21競技の中に、空手があった。

私の友人が見たテレビ番組は、デフリンピックに出場する空手選手を取り上げたものだったのかもしれない。

 

障害のあるアスリートの国際大会といえば、多くの人が思い浮かべるのが「パラリンピック」だ。ただし、パラリンピックは身体障害、視覚障害、知的障害のアスリートの大会で、聴覚障害のアスリートは含まれていない。聴覚障害のアスリートが出場する国際大会は「デフリンピック」だが、パラリンピックと比べると認知度は低い。

 

友人の顔を思い浮かべ、「空手はパラリンピックじゃなくて、デフリンピックだよ」と伝えたら、彼女がどんな反応をするか考えてみた。

「なぜ、聴覚障害のアスリートだけ、別の大会になっているの?」と質問されそうだ。「聴覚障害のアスリートもパラリンピックに出られるようにしたらいいんじゃない」と言うかもしれない。

 

歴史を調べてみると、デフリンピックのほうが、パラリンピックよりも先に始まっている。

デフリンピックの第1回大会は、1924年にフランス・パリで開催された。

これに対して、パラリンピックは第二次世界大戦後、1960年にイタリア・ローマで開催された大会を第1回大会と位置づけている。

 

デフリンピックを運営する「国際ろう者スポーツ委員会」が、パラリンピックを運営する「国際パラリンピック委員会(IPC)」に加盟していた時期もあったが、デフリンピックでは、コミュニケーションを国際手話で行うなど聴覚障害者独自の文化を重視していることなどから、1995年にIPCを離脱した経緯があるようだ。

デフリンピックは、大会の理念や運営の考え方などで独自のものがあり、それを維持していくことを重視しているのかもしれない。

 


 

デフリンピックの競技に注目すると、聴覚障害のアスリートのための工夫がある。例えば、陸上のトラック種目や水泳のスタートでは、目で見てスタート時が分かるフラッシュランプを使用する。サッカーでは、審判が笛ではなく旗を使用して、選手に判定を伝える。

 

2021年に開催された東京2020パラリンピックは、コロナ禍で無観客での開催だった。

東京2025デフリンピックは東京体育館、東京武道館、駒沢オリンピック公園総合運動場など19会場で21競技が実施され、観戦が可能だ。

 

デフリンピックが日本で開催されるのは初めてで、今回はデフリンピック100周年の記念大会にもなっている。

 

この秋は、デフリンピックを観戦に出かけてみてはどうだろう。

 

(河原レイカ)




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