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車いすラグビー 日本がアメリカを破って優勝

  • paraspoofficial
  • 5月3日
  • 読了時間: 5分
決勝は、日本対アメリカ。日本代表の池選手(右)
決勝は、日本対アメリカ。日本代表の池選手(右)

4カ国が参戦し、4月29日から千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催されていた車いすラグビーの国際大会「ジャパンパラ競技大会」は最終日の5月3日、決勝が行われ、世界ランキング1位の日本が銅3位のアメリカを47-38で破って優勝した。また、決勝に先立って行われた3位決定戦では同5位のフランスが同6位のカナダに47-46で競り勝った。

 

決勝戦は2024年、日本が初の金メダルを獲得したパリパラリンピックの決勝戦と同一カードとなったが、序盤から主導権を握った日本が先行する展開となった。選手交代を繰り返し多彩な戦術で得点を重ね、前半は27-21の6点リードで折り返す。後半に入ってアメリカがリズムをつかむ場面も見られたが、日本が最終第4ピリオドで突き放した。

 

日本は4カ国総当たりの予選ラウンドから無傷の7連勝を収め、世界王者の強さを示した。アシスタントコーチ兼任の池透暢は、「どのゲームも精度高く、全員が一貫してレベルの高いプレーをやり続けた。またラインアップを変えてもそれを行うことができたのは、取り組んできた成果が出たと思う」と、手応えを口にした。

 

日本は今大会、テーマの一つとして、「さまざまなライン(コート上の4選手の組み合わせ)を試すこと」を挙げていた。実際、ハイポインターとローポインターの2名ずつで構成する「ハイローライン」とハイからローまで多様な持ち点の選手で組む「バランスライン」をそれぞれ数種類ずつ、状況に応じて起用し、戦った。


池崎大輔選手(中央) 
池崎大輔選手(中央) 
橋本勝也選手
橋本勝也選手



そして、多彩なラインアップがそれぞれの特徴や強みを生かしながら、チーム全員で幅広い戦略で戦い切った。池は、「若い西村(柚菜)選手、草場(龍治)選手、仲町(俊耶)選手などをはじめ、世界の中でもまだ成長し続けているところが日本の強み。さらに、橋本(勝也)選手もランの強さがまた上がってきてるので、そういった意味でも世界に脅威を与える選手としてハイポインターも育っている。かなりバランスが良くなってきたなと思う」とうなずいた。

 

中谷英樹ヘッドコーチ(HC)は、「全試合通して、特にディフェンスの部分で高い強度でやり続けられたことが1番の収穫」と評価しつつ、オフェンスについては、「もう少し安定してできたんじゃないかと思うようなシーンがあった。次の合宿でしっかり修正したい」とさらなる強化ポイントも挙げた。

 

エースの橋本は強豪アメリカとの決戦について、「出だしはチームとしては正直、良くなかった。でも、徐々に日本らしいラグビーができて、結果的にあれだけの点差をつけることができたのは、チームとして今までやってきたことが体現できたのかな」と振り返った。

 

頻繁な選手交代による多様なラインアップを使ったゲームについては、「新しい日本の戦い方になるのかなと思う。その中でラインごとに結果を残し続けることができたのは今後に繋がる」と、手応えを口にした一方で、「ディフェンスの強度という部分では高まっているが、オフェンスの安定感が今後は鍵になってくるのかな。まだまだ日本チームとして課題もたくさんある。日々の合宿を大切にして(強化に)取り組んでいきたい」と前を見据えた。

 

■新星、西村柚菜の活躍。深めた経験と自信

 

西村柚菜選手
西村柚菜選手

今大会ではさまざまなラインアップが起用されたなか、持ち点2.5の女性選手、西村を入れるラインも複数を試された。西村が入るラインはルール(*)により4選手の合計持ち点を最大9.0点までで組めるというアドバンテージがある。(*:女性選手が0.5~1.5点の場合は1人につき0.5点が、2.0点以上の場合は同じく1.0点が加算される)

 

中谷HCは、「2.5点の選手として通用するぐらいのスピードがある西村選手が1.5点という扱いで出られることは日本にとって大きな武器になるのではないかと期待している」と起用意図を説明。西村には健常者時代にサッカー経験があり、中谷HCは「オフェンスとディフェンス(それぞれ)でスペースをどう使うかという感覚が非常にいい。広いスペースが空いたら、そこでボールを受けてパスを受けることもできるし、橋本に強いプレッシャーがいっていたら、そこに絡みに行きながら、相手のディフェンスをコントロールして上がることもできる」と評価する。

 

実際、西村は相手をいい位置でブロックして、ハイポインターの動きをサポートする守備的な貢献に加えも自身がスペースに走り込んでボールを受け、そのままトライするなど攻撃面でも活躍が見られた。

 

橋本も最も手応えのあったラインとして、西村を加えたラインを挙げ、「(西村は)最初のほうは硬さもあったが、試合を通していくたびに自信がつき、ゲームIQも付いてきたので助かった部分もある。今後を見据えた上ですごく重要なライン」と期待を寄せた。

 

西村自身も、「今大会を通して、自分の中で強豪相手にどれだけ自分が経験できるかを目標としてきて、習得できたものとか、得られた経験っていうものがすごく多かった」と振り返った。改めて自分の強みを実感し、自信も深めた。「各国のミッドポインターに対して、自分のスピードがかなり通用したなと思った。裏に抜けるスピードだったり、他国の選手に負けないくらいのスキルや自信につながった」と話した。

その上で、「強いプレッシャーの中でパスをさばくのか、ランを選択するのかという判断がまだまだ劣っている部分がある。そういった判断をもっと早くして、焦らずプレーできるような選手になっていきたい」とさらなる成長を誓った。

 


今大会は最終日の1300人以上を含む、4日間で約2400人の観客を集めた。橋本は、「すごく気持ちよかった。今回を機に多くの方々に車いすラグビーの面白さを知っていただけたらいいなと思う。今後の試合も多くの方々に見ていただけるように、そんなチームであったり、選手を目指していくことがすごく大切」と力を込めた。

 

日本はこの後、6月には強豪国が集まるカナダカップ(カナダ)に、そして8月には世界の頂点を目指す世界選手権(ブラジル)に臨む。また10月には愛知・名古屋アジアパラゲームズも控える。その先には、2028年のロサンゼルスパラリンピックでの「連覇」の期待もかかる。

 

池は今後を見据え、「まずは、(8月の)世界選手権で自分たちがどれだけ通用するか、各国はどんな対策をしてくるかという情報を得る。その上で、ロサンゼルス(パラリンピック)でもう一度金メダルを取りたいという思いは揺るがない」と力強く言い切った。

 

今大会で得られた自信を糧に課題克服に取り組み、さらなる栄光に向けて突き進む。



(取材・執筆:フリーライター星野恭子、写真:河原レイカ)

 

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