ドラマで話題の車いすラグビーの国際大会、世界王者の日本が4連勝
- paraspoofficial
- 13 時間前
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4カ国対抗で競う車いすラグビーの国際大会、「2026ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」が千葉ポートアリーナ(千葉市)で4月30日から開催されている。2024年パリパラリンピック金メダルで世界ランキング(*)1位の日本は大会2日目の5月1日までで4戦全勝と好調だ。
大会には他に、パリ大会銀メダルで世界ランキング3位のアメリカ、同5位のフランス、同6位のカナダの4チームが参加している。5月2日まで総当たり戦2回の予選ラウンドを行い、上位2チームが大会最終日の5月3日の決勝に臨む。
日本は開幕戦でフランスに57-43で快勝すると、2戦目のカナダも58-39で退けた。2日目もカナダを58-45で破り、強敵アメリカも55-41で撃破した。
いずれの試合も日本は序盤から優位に立ち、着実に得点を奪う戦いぶりで勝ち星を重ねている。とくに、積極的な選手交代による多彩なラインアップ(選手構成)を試しながら、選手間の連係を高め、各ラインの特徴を見極め強化している様子がうかがえる。
ちなみに、車いすラグビーでは各選手が障害の程度などに応じ、最も重度な0.5点から最も軽度な3.5点まで0.5点刻みで7つのクラスに分かれている。クラスの数字がそのまま選手の持ち点となり、コート上の4選手の持ち点合計を8点以内で構成するというルールとなっている。また、持ち点0.5~1.5点で主に守備を担う選手を「ローポインター」、2.0~2.5点の選手を「ミドルポインター」、3.0~3.5点で主に攻撃を担う選手を「ハイポインター」と呼ぶ。


日本の主軸は橋本勝也(3.5)や池透暢(3.0)らのハイポインターと小川仁士(1.0)や長谷川勇基(0.5)といったローポインターが2人ずつで組む「ハイローライン」で、数種のハイローラインを使い分ける。だが、今大会はさらに、より多様な4選手で組む「バランスライン」の投入も目立つ。さまざま選手を起用することで相手のマークを翻弄したり、バランスラインは運動量の多いハイポインターを休ませる目的もあり、戦術の厚みも増す。
中谷英樹ヘッドコーチ(HC)は今大会の位置づけとして、「8月の世界選手権に向けて世界のトップレベルの国に対して通用するラインナップを育てていったり、選択したりということを今している段階」と話し、「いろいろなラインを試しながら、いろいろな戦術を試しながら、いいプレーができた。特にディフェンスでは1試合を通して一貫し、どのラインになっても同じようなことができるというのが日本チームの強みで、その部分が非常に良かった」と評価した。

さらに現在のルールではラインアップに女性選手が入る場合、その選手がローポインターの場合は1人につき0.5点が、ミドルポインター以上の場合は1.0点が、チーム構成点に加算される。おかげで、より多彩で強力なラインアップが可能となり、戦術の幅も広がることになる。
今大会、日本唯一の女性選手として代表入りを果たしたのが、西村柚菜だ。持ち点2.5点なので1.5点換算となるため、ハイローライン、バランスラインのいずれにもフィットする上、西村が入るラインアップは最高9.0点までの4選手で組み合わせることができる。
そうしたルール上のアドバンテージに加え、西村自身も持ち前のスピードやセンスによって、今大会は攻守にわたって存在感を放っている。ハイポインターを活かす守備的なプレーだけでなく、自ら攻撃に参加し、自ら走り込んでポイントゲッターとしても活躍。また、パスレンジの長さも生かし、インバウンダーとしての役割もこなす。
西村は、「プレータイムが少ない中で、自分ができること、今まで練習してきたことをやろうという気持ちで、出番が来た時に万全な準備をしていた。スピードを活かしたプレーだったり、スペースに走る動きだったり、今まで練習してきたことを自分で発揮できるように意識して、できた」と手応えを口にした。
サッカーに取り組んでいた西村は2022年、大学時代に授業中の事故により車いす生活になった。最初は車いす陸上を始めたが、「世界」を目指して可能性をより広げようと、2025年から本格的に車いすラグビーにも挑みはじめた。
ラグビーは4選手の連係と位置取りなどが重要だが、西村は、「健常者時代にサッカーをやっていたことで、スペースやエリアの意識はラグビーを始めた当初から自分の中でなんとなく理解できたものがあった。(車いす)陸上をやっていたので、(車いすをこぐ)スピードは自分の特徴であり、武器。大切にしたい」。自身の強みを存分に生かした選手を目指す。
国際大会出場経験はまだ少ないため、今大会では「海外の強い相手にどれだけ自分が対応できるかとか、自分がどれだけまだ足りていないとか、そういう気づきを意識して感じることができればと思っている」。さらなる成長を目指し、コートを走り回る。
エースの橋本勝也は、「今大会、いろいろなラインを試そうとやっていく中で、ラインごとに出ている課題をしっかりと意識した中でプレーできている場面が多かった。各選手の強みを生かすために、どうプレーに落としていくか。時間がかかると思うが、コミュニケーションで補っていきたい」と、チームのさらなる成長を誓った。
上半身の厚みがさらに増し、フィジカル面の充実が感じられる橋本は、自身が感じる進化については、「(プレーの)予測がすごくできるようになったのかなと思う。例えば、自分がコートにいる時には誰にボールを持たせるか、そのあと誰にリターンするかとか予測ができていることで、ターンオーバーがとれたシーンもあった」と振り返った。
小川仁士は長く組んでいるハイローラインは「いつも通り」だったが、西村など新たなメンバーと組むバランスラインは「もう少し流れをうまく作れたらよかったなという反省点はある」と振り返った。「まだ慣れないので、頭では分かっているが、無意識に体が動かない。判断のわずかなズレや4人の連係がちぐはぐな部分があった。アイコンタクトや、僕たちは『ショートトーク』と呼んでいる、1個の単語でどういう動きをすればいいかを指示する短いトークでプレーをイメージしながら動くことができれば、もっと良くなると思っている」と前を向く。そして、金メダルを獲得したパリパラリンピックチームと同様、「12人の誰が出ても世界一のラインナップを作れるようなチームを作っていきたい」と力を込めた。
会場では無料で観戦できるほか、YouTubeによる全試合ライブ配信・アーカイブ配信も行われている。なお、5月3日には3位決定戦(10時~)と決勝(13時30分~)が行われる他、試合間には特別イベントとして、放送中のTBS系日曜劇場『GIFT』の出演者をまじえたトークショーも予定されている。登壇者には俳優の細田善彦さん、八村倫太郎さん、ノボせもんなべさんと平野俊一監督が予定されている。(注:トークショーのライブ配信、アーカイブ配信の予定なし)
*:世界ランキングは2025年12月現在
2026ジャパンパラ車いすラグビー競技大会
(取材・執筆:フリーライター星野恭子)



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