車いすテニス小田凱人、“最高のライバル”と好勝負。「可能性を感じた」

10月6日、車いすテニスの男子シングルス世界ランキング1位の小田凱人(東海理化)と同2位のアルフィー・ヒューエット(イギリス)によるエキシビションマッチが有明コロシアム(東京都江東区)で行われた。試合は小田が7-6(7-3)、4-6、[10-6]のフルセットの激闘の末に勝利した。
試合後の会見で小田は、「可能性を感じる日になりました。これからもっと車いすテニスというものが変化して、文化として一般化して、誰もが見に来てくれるものになっていく……。これからの可能性というものを、見せられたのかなと思います」と語った。

同マッチは9月30日から10月6日まで開催されていた「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2026男子大会」の一環で行われた。同大会では例年、車いすの部も国際公式戦として実施されているが、今年は日程変更により他の車いすの海外大会と開催が重なったため中止となった。そこで、小田自ら主催者にエキシビションマッチの実施を交渉。出場を打診されたヒューエットも快諾し、「頂上決戦」が実現した。
平日午前11時開始の試合だったが、パリ2024パラリンピックの金、銀メダリストの競演を無料で観戦できることもあって約4000人の観客が集まった。試合形式はエキシビションのため、第1、2セットともノーアドバンテージ方式、6ゲームオール後は7ポイントタイブレーク、最終セットは10ポイントマッチタイブレーク制で行われた。
世界トップ2による熱のこもった試合は1時間47分の接戦となった。実力者同士が展開する激しいラリーの応酬や巧みなネットプレーが何度も観客をどよめかせた。第1セットは小田が先行されるも徐々に追い上げ、6ゲームオールからタイブレークをものにした。第2セットも激しい攻防を繰り広げたが、ヒューエットに取り返された。最終セットも接戦になったが、ゲームを優位に進めた小田が勝ち切った。ゲームセット後、ネット越しに健闘を称え合う両選手を、大歓声が包んだ。

試合後に会見に臨んだ2人のコメントには、日本のテニスの聖地で大勢の観客を前にプレーできた喜びと手応えがにじんだ。小田は「待ちに待った日だったし、(車いすテニスを)競技スポーツとして楽しんでもらえたことへの可能性を感じた。もっと上のステージにいける、もっと盛り上げるぞと思いました」と力をこめた。
ヒューエットも、「今日は本当にイティングな日になりました。車いすテニスの最高のクオリティを皆さんにお見せできたのではないかと思うので、今回、ここに来られて本当に光栄です。この素晴らしい会場での今日の試合は、グランドスラムのイベントにも全く引けを取らないものだと感じたし、車いすテニスにとって重要なことだったと思います」と熱戦を振り返った。
さらに、2人は互いの存在を一言で表すよう求められた。「う~ん」とうなった小田は、「敵」と絞り出した後、「変な意味じゃなくて、そういう人がいないと、勝負してる側も見てる側だって楽しくないと思う」と説明。「彼がいることで僕もやりがいを感じているし、もっとやらないといけないと常に思える。そういう存在かなと思います」と、うなずいた。
ヒューエットは、小田の答えが「敵」と聞かされ、「まず思ったことは、うざい存在」とニヤリ。すぐに、「いい意味でのライバル」と言い換え、「お互いにリスペクトを持って高め合い、モチベーションを与えつづけていける健全な関係性。そんな2人だから、エキシビションでありながら、これだけの素晴らしい試合ができたと思います」とうなずいた。
小田は今年9月、「最年少での年間グランドスラム達成」を狙った全米オープンの決勝で、ヒューエットにストレート負けを喫した。敗戦から3週間以上経ったが、「まだまだ、とても悔しい」と胸の内を明かした。「初めて、挫折に近いものを感じた」という敗戦を、「どう自分が解釈するかで、今後のテニスも変わってくるのかなと思います」と前を向く。
小田の次戦は10月18日に開幕する愛知・名古屋アジアパラ競技大会になる。シングルスで優勝すれば、2028年ロサンゼルスパラリンピックの出場権もいち早くつかめる重要な大会だ。さらに、同県一宮市出身の小田にとっては地元での貴重な舞台でもある。
「世界ランキング1位として自分が見せられる姿は惜しみなく、同世代や若い子たちに見せられたらいい。実際に見てもらうことでこの競技ももっと発展していくと思うので。ただ、見てもらうにはやっぱり勝っていないと見たいと思わないと思う。いい姿を見せたいです」
この日感じた可能性を、さらに色濃く、たしかな現実とすべく、小田は自らを鼓舞しつづける。
(取材・撮影:フリーライター星野恭子)



コメント